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大阪高等裁判所 昭和59年(ネ)1009号 判決

控訴人 堀井タイル株式会社

右代表者代表取締役 堀井忠夫

右訴訟代理人弁護士 伊賀興一

被控訴人 岡建設こと 岡實

被控訴人 まこと住建こと 檀原忠司

右両名訴訟代理人弁護士 赤澤博之

主文

一、原判決を次のとおり変更する。

二、控訴人に対し、

被控訴人岡實は、金三七〇万八一三四円及びこれに対する昭和五六年一一月二八日から支払いずみまで年六分の割合による金員

被控訴人檀原忠司は、金三〇〇万円及びこれに対する昭和五六年一一月二八日から支払いずみまで年六分の割合による金員

を支払え。

三、控訴人のその余の請求を棄却する。

四、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

五、この判決の第二項は仮に執行することができる。

事実

一、当事者双方の求めた裁判

控訴人は、「原判決を取消す。控訴人に対し、被控訴人岡實は金三七〇万八一三四円、同檀原忠司は金三〇〇万円及びこれらに対する昭和五六年一〇月八日から支払いずみまで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求め、被控訴人らは控訴棄却の判決を求めた。

二、控訴人の請求原因

(一)  控訴人は、タイル施工等を業とするものであるが、訴外関屋住宅株式会社(以下関屋住宅という)に対する大阪地方裁判所堺支部昭和五六年(ワ)第五二一号請負代金請求事件の執行力のある判決正本に基づき、関屋住宅が被控訴人岡建設こと岡實(以下被控訴人岡という)に対して有する三七〇万八一三四円、被控訴人まこと住建こと檀原忠司(以下被控訴人檀原という)に対して有する三〇〇万円の各債権につき、昭和五六年一〇月六日同支部昭和五六年(ル)第四〇七号債権差押命令(以下本件債権差押命令という)を得た。

(二)  被控訴人両名に対する右決定正本は関屋住宅に対し昭和五六年一一月二〇日、被控訴人両名に対し同年一〇月八日各送達された。

(三)  よって、控訴人は、被控訴人岡に対し右差押えにかかる金三七〇万八一三四円、被控訴人檀原に対し右同金三〇〇万円及びこれらに対する本件債権差押命令が被控訴人らに送達された日から支払いずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

三、請求原因に対する被控訴人らの認否と主張

(一)  請求原因(一)の事実のうち、控訴人がその主張の債権差押命令を得たことは認めるが、その余の事実は知らない。同(二)、(三)の事実はいずれも認める。

(二)  被控訴人岡の主張

1. 被控訴人岡は関屋住宅に対し、昭和五六年二月九日現在で請負残代金債務六四四万三九〇〇円を負っていた。

2. 関屋住宅は昭和五六年二月九日訴外株式会社大久木材(以下大久木材という)に前項の被控訴人岡に対する債権の取立受領権限を付与し、同日被控訴人岡に対し、右残代金を大久木材に支払うよう承諾を求めてきたので、同被控訴人はこれを了承した。

被控訴人岡は、同年二月一四日、右請負残代金債務六四四万三九〇〇円の支払いにかえて、同被控訴人振出の額面右金額、支払期日同年四月一五日の約束手形一通を大久木材に交付した。

ところで被控訴人岡は、右手形の支払期日の決済が困難となったため、同年四月一三日、右手形の所持人であった大久木材に支払の猶予を求め、支払期日を昭和五六年五月三一日とする額面前同額の約束手形一通を右大久木材に振出交付し、前記手形の返還を受けた。

その後被控訴人岡において右手形の支払期日の決済が可能となったことから、同年五月一八日に前記手形と額面同額の小切手一通を大久木材に振出交付し、右約束手形(支払期日昭和五六年五月三一日の分)の返還を受けた。大久木材は、同年五月二一日に右小切手を現金化した。

このように被控訴人岡は、昭和五六年二月一四日、関屋住宅に対する請負代金債務の支払いにかえて約束手形を振出交付し、それと引換えに関屋住宅から建物の引渡しを受けたことにより、右同日関屋住宅との工事請負契約は双方すべて履行を了し、その後は前記手形金債務以外には何らの債権債務もなくなったものである。

(三)  被控訴人檀原の主張

1. 被控訴人檀原と訴外三幸住建は、共同で関屋住宅に請負わせた建物建築工事について昭和五六年一月一九日現在で請負残代金債務一一五二万五〇四〇円を負っていた。

2. 関屋住宅は昭和五六年一月一九日大久木材に対し、前項の被控訴人檀原に対する債権の取立受領権限を付与し、同日被控訴人檀原に対し、右残代金を支払うよう承諾を求めてきたので、同被控訴人はこれを了承した。

被控訴人檀原と訴外三幸住建は、同年二月一六日、右請負残代金債務金一一五二万五〇四〇円の支払いにかえて、同被控訴人振出の額面金五七六万二五二〇円、支払期日同年四月三〇日の約束手形一通、ならびに訴外三幸住建振出の額面、支払期日いずれも右と同じの約束手形一通を、大久木材に交付した。

ところで被控訴人檀原振出の右手形は、同年四月三〇日に振出人株式会社大和銀行古市支店、額面金五二〇万円、発行日昭和五六年四月二八日の小切手一通及び振出人被控訴人檀原、額面金五六万二五二〇円の小切手一通と差換えられ、大久木材において同年四月三〇日にこれを現金化した。三幸住建振出の手形についてもその後手形を書替えたうえ同年六月二九日に決済した。

このように被控訴人檀原は、昭和五六年二月一六日、関屋住宅に対する請負代金債務の支払いにかえて約束手形を振出交付し、それと引換えに関屋住宅から建物の引渡しを受けたことにより、右同日関屋住宅との工事請負契約は双方すべて履行を了し、その後は前記手形金債務以外には何らの債権債務もなくなったものである。

四、被控訴人らの主張に対する控訴人の認否と反論

(一)  被控訴人らの主張事実はいずれも争う。

(二)  控訴人の主張

(1)  控訴人は、本件債務差押命令に先立ち、右債権差押命令の請求債権である控訴人の関屋住宅に対するタイル施工等の下請工事代金請求債権金六七〇万八一三四円の執行保全のため、関屋住宅が被控訴人らに対して有する各債権につき、大阪地方裁判所堺支部に仮差押の申請をなし、同支部昭和五六年(ヨ)第八二号債権仮差押事件として係属し、昭和五六年二月二一日仮差押命令を得、右決定は同年二月二二日被控訴人らに送達された。

しかるに被控訴人らは、右仮差押命令の送達以前に関屋住宅に対する債務の支払いに代えて大久木材に約束手形を交付したように主張しているが、右は後日に作成した虚偽の書面により仮差押命令送達前であるように装っているにすぎない。

(2)  被控訴人両名の経営者と大久木材の経営者は、いずれも姻戚関係があり、通常の取引関係にない密接な関係を有しているが、関屋住宅が請負工事の半ばにして倒産することを知った被控訴人両名は、関屋住宅の倒産処理による混乱を避けるため、関屋住宅の債権者である大久木材と通謀し、大久木材が関屋住宅の代理人としての権限を越えて自己の債権を回収する目的で被控訴人両名から手形を受領し、被控訴人両名も大久木材の右意図を知り、これに協力して被控訴人両名と大久木材の共通の利益のため大久木材に手形振出による弁済をした。

被控訴人両名の右弁済行為は、民法九三条但書の類推適用により無効である。また、右行為は権利濫用にわたり、あるいは信義則に反して無効であり、控訴人に対抗しえない。

(3)  被控訴人らが主張する関屋住宅の大久木材に対する取立受領権限委任契約は、その実質は関屋住宅と大久木材との債権譲渡の合意であり、債権譲渡に関する法的規制を潜脱する意図でなされたものというべきであるから、右の委任契約をもって控訴人のなした仮差押に対抗するには確定日付のある証書をもってすることを要するものというべきである。

しかるに、被控訴人ら主張の取立受領権限委任契約は、契約の存在と作成日付ならびに弁済の日などがすべて確定日付のある証書をもってなされたものではないから、右の契約をもって右の仮差押に対抗しえない。

(4)  さらに被控訴人らは、後に到来する支払期日に手形を書替えするのを前提に手形を振出したことをもって弁済であると主張している。

しかし、控訴人が関屋住宅の被控訴人らに対する債権を仮差押した日には、いまだ弁済がなされていないのであるから、後日数度にわたり書替えられた手形や小切手の決済をしたからといって、控訴人のなした右仮差押に対抗しうるものではない。

五、右主張に対する被控訴人らの認否

控訴人の右主張のうち、(1)の前段の事実(被控訴人主張の仮差押命令とその送達についての事実)は認めるが、同後段の事実及び(2)、(3)、(4)の主張事実はいずれも争う。

六、証拠〈省略〉

理由

一、請求原因(一)の事実のうち、控訴人が債権差押命令を得たこと及び同(二)、(三)の事実は、いずれも当事者間に争いがなく、原審における控訴人会社代表者本人の尋問の結果ならびに弁論の全趣旨によれば、控訴人がタイル施工等を業とするものであること、控訴人が関屋住宅に対する大阪地方裁判所堺支部昭和五六年(ワ)第五二一号請負代金請求事件で勝訴判決を受けたこと、右判決は執行力を有することが認められ、他に右事実を左右するに足る証拠はない。

二、控訴人主張の本件債権差押命令にかかる関屋住宅の被控訴人らに対する本件各債権について、被控訴人らは既に弁済ずみである旨主張するので以下判断するに、

(一)  〈証拠〉によれば、関屋住宅が被控訴人らに対する債権について大久木材に取立受領権限を付与し、被控訴人らが大久木材に手形を交付するにいたる経緯について、次の事実を認めることができる。

1. 関屋住宅は、被控訴人岡から昭和五五年一一月一五日、河内長野市栄町所在の河内長野荘園の建築工事を請負い、昭和五六年二月九日現在の請負工事残代金債権が金六四四万三九〇〇円であったところ、関屋住宅は、昭和五六年ごろから次第に業績が悪化してきたため、同年二月九日、債権者の大久木材からの求めに応じ、被控訴人岡に対して有する右請負工事残代金債権全額の取立受領権限を大久木材に付与し、大久木材が右代金を受領したときは任意の方法で大久木材の関屋住宅に対する債権の弁済に充当することができる旨の契約を締結し、第三債務者たる被控訴人岡は、右同日、右契約に基づき代金受領権限を付与された大久木材に支払うことを承諾した。

被控訴人岡は、同年二月一四日、額面が右請負残代金債権と同額の金六四四万三九〇〇円、支払期日同年四月一五日の約束手形一通を大久木材に振出交付した。

被控訴人岡は、右手形の支払期日の決済ができないため、大久木材に支払の猶予を求めて同年四月一三日に支払期日同年五月三一日の約束手形に書替え、右支払期日前の同年五月一八日に右手形額面と同額の小切手一通を大久木材に交付し、大久木材は右小切手を現金化して関屋住宅に対する債務の弁済に充当した。

2. 関屋住宅は、被控訴人檀原及び訴外三幸住建(代表者安川幸男)からも昭和五五年八月二五日付、同年一〇月二〇日付、同年一二月一〇日付で府中荘苑の各建築工事を請負い、昭和五六年一月一九日現在の請負工事残代金債権が金一一五二万五〇四〇円であったところ、関屋住宅は、右同日被控訴人檀原に対して有する右請負工事残代金債権全額の取立受領権限を大久木材に付与し、大久木材が右代金を受領したときは任意の方法で大久木材の関屋住宅に対する債権の弁済に充当することができる旨の契約を締結し、第三債務者たる被控訴人檀原は、右同日、右契約に基づき代金受領権限を付与された大久木材に支払うことを承諾した。

被控訴人檀原と訴外三幸住建は、同年二月一六日、額面金五七六万二五二〇円、支払期日同年四月三〇日の約束手形を各一通ずつ大久木材に交付した。右各工事請負契約はいずれも被控訴人檀原が訴外三幸住建(代表者安川幸男)と共同で関屋住宅に請負わせたものであったので、前記残代金債務の半額ずつの額面の約束手形計二通を被控訴人檀原と右安川が大久木材に交付したものである。

被控訴人檀原は、右手形の支払期日に右手形と同額面の小切手と差換えて交付し、右小切手は右同日現金化されたが、訴外三幸住建は、同訴外人振出の約束手形の支払期日を同年六月三〇日とする約束手形に書替えたうえ、右手形を決済した。

以上の事実を認めることができ、他に右認定を左右する証拠はない。

(二)(1)  控訴人が、被控訴人らに対する本件債権差押命令に先立ち、右差押命令の請求債権である控訴人の関屋住宅に対するタイル施工等の下請工事代金請求債権金六七〇万八一三四円の執行保全のため関屋住宅の被控訴人らに対する各債権につき仮差押の申請をなし、同支部昭和五六年(ヨ)第八二号債権仮差押事件として係属し、昭和五六年二月二一日仮差押命令を得、右決定が同年二月二二日被控訴人らに送達されたことは当事者間に争いがない。

(2)  控訴人は、後日に作成した書面により仮差押命令の送達前の日付で被控訴人らが大久木材に手形を交付したように装っているというが、前記(一)の冒頭掲記の大西久美の証言、岡、檀原各本人尋問の結果によれば、被控訴人ら提出の乙号各証がいずれも関屋住宅、大久木材あるいは被控訴人らによってその作成日付のとおり作成された書面であることが認められるのみならず、乙第三号証(昭和五六年二月一四日付大久木材作成の領収証)、同第七号証(昭和五六年二月一六日付大久木材の領収証)がいずれも一連の通し番号がうたれた領収証のうちの各一通であることが乙第一〇、一一号証によって裏付けられるところであるから、被控訴人ら提出の乙号各証が関屋住宅、大久木材あるいは被控訴人らによりことさらに作成日付を遡らせて作成された書面であるとはいえず、控訴人の右の主張は失当というべきである。

(三)  控訴人は、被控訴人のなした手形の交付が民法九三条但書の類推適用による無効あるいは権利の濫用、信義則違反による無効などを主張するので案ずるに、前記認定の事実によれば、被控訴人らが大久木材に手形を交付するにいたる経緯は、大久木材や被控訴人らがいずれも関屋住宅の営業状態が悪化していることを知り、大久木材が関屋住宅の請負工事代金債権の弁済受領権限を得たうえ被控訴人らから手形の交付を受け、これを大久木材の関屋住宅に対する債権の弁済に充当したものであることが認められるほか、原審証人大西久美の証言によれば、大久木材の代表者大西久美の義兄が被控訴人岡建設に、大西久美の親戚の者が被控訴人まこと住建に、それぞれ関係していることが認められるけれども、右のような事情を考慮にいれても被控訴人らの大久木材に対する手形の交付をもって民法九三条但書の類推適用により無効であるとはとうていいえないし、被控訴人らの手形の交付が権利の濫用ないし信義則に違反するものとは認められず、右控訴人の主張も採用の限りではない。

(四)  次に控訴人は、被控訴人らの主張する代金受領権限授与契約が確定日附のある証書をもってなされたものではないから、民法四六七条の類推適用により控訴人に対抗しえないものと主張するので案ずるに、前記認定の事実によれば、関屋住宅と大久木材との代金受領権限授与契約は、実質上取立を目的とする債権譲渡契約と同視するのが相当であり、それゆえ、かかる権限の授与についてはその対抗要件につき民法四六七条を類推適用すべきものと解するのが相当である。もっとも控訴人は、関屋住宅あるいは被控訴人らが確定日附のある証書による通知承諾のないことから直ちに取立受領権限授与契約を否認しうると主張する如くであるが、債務者以外の第三者が確定日附のある証書による通知、承諾のない者の譲受けを否認することのできるのは、債権がその者に帰属して存在している間に限られ、当該債権が弁済その他の事由で消滅した後にはもはや否認する余地がないものというべきである。

しかして被控訴人らは、右取立受領権限授与契約について確定日附のある証書による通知又は承諾のあることについて別段の主張をしないまま、単に大久木材に対する手形の交付により既に弁済ずみであると主張している。すなわち、被控訴人らはいずれも取立受領権限を付与された大久木材に対し、昭和五六年二月一四日に被控訴人岡が、同年二月一六日に被控訴人檀原がそれぞれ約束手形を交付したものであることが、前記認定事実に照して明らかであるところ、被控訴人らは右手形の交付は債務の弁済に代えて交付したものであると主張する。

しかし債権者が原因債務支払のため債務者から手形の交付を受けた場合、右手形の交付は特段の事情のない限り原因債務支払確保のためになされるものであり、原因債権と手形債権が併存し、債権者は任意にそのいずれかを選択行使しうるものというべきであるのみならず、前記(一)に認定の事実によれば、被控訴人らは交付した手形について期日に決済ができず書替手形を差替交付している事実が認められるのであって、これらの事実によっても被控訴人らが支払いに代えて手形を交付したものということは困難というのほかはなく、その他被控訴人らの手形の交付が支払いに代えてなされたというような特段の事情の存在についての主張立証は存しない。(なお被控訴人ら主張の同人らが手形の交付と引換えに関屋住宅から建物の引渡しを受けたとする事実も、右の特段の事情と解することはできない。)

以上の事実によれば、控訴人を債権者、関屋住宅を債務者とする仮差押命令が第三債務者たる被控訴人らに送達された昭和五六年二月二二日当時その目的となった被控訴人らの債務は控訴人に対する関係では弁済ずみのものとはいえず原因債務として存続していたというべきで、弁済により消滅している旨の被控訴人らの主張は失当である。

しかして被控訴人らは、関屋住宅と大久木材間の取立受領権限の委任契約について確定日附のある通知、承諾の存することについて別段の主張、立証をしないから、被控訴人らのなした大久木材に支払う旨の承諾は控訴人(控訴人が民法四六七条二項にいう債務者以外の第三者にあたることはいうまでもない)に対抗することができず、被控訴人らは控訴人の本件債権差押命令により差押にかかる関屋住宅に対する債務金(被控訴人岡につき金三七〇万八一三四円、被控訴人檀原につき金三〇〇万円)及びこれらに対する本件債権差押命令が債務者たる関屋住宅に送達された日である昭和五六年一一月二〇日から一週間を経過した昭和五六年一一月二八日(なお、控訴人は本件債権差押命令が第三債務者たる被控訴人らに送達された日である昭和五六年一〇月八日以降の遅延損害金の支払いを求めるが、差押債権者は債務者に対する差押命令送達の日から一週間を経過したときにその債権を取立てることができるのであるから、控訴人の右の請求部分は昭和五六年一一月二八日以降の限度で認容すべく、その余は失当というべきである。民執法一五五条一項。)から支払いずみまで商法所定年六分の割合による遅延損害金を支払うべきである。(因みに本件債権差押命令の関係人はいずれも商人であることは前記認定の事実に照して明らかであるから、被差押債権の遅延損害金は商事法定利率によるべきものである。)

三、以上の次第であるから控訴人の本件請求は右の限度で認容しその余は失当として棄却すべきであるから、一部においてこれと異なり、控訴人の請求を全部棄却した原判決を右のとおり変更することとし、訴訟費用の負担、仮執行の宣言について民訴法九六条、九三条、九二条、一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 今富滋 裁判官 畑郁夫 亀岡幹雄)

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